はじまり

「ねえ、アンタなに泣いてんのよ」
 おずおずと顔を上げれば、目に映ったのは美しい銀の髪に、炎のような赤い瞳。かなり珍しい色合いをした青年だった。何しろ話しかけられた少女は、一度としてその色合いの人を見たことがなかったのだから。
「だ、だって……」
 べそりと泣いているのは、人外の中でも珍しい、一つ目の少女だった。
「……たんがんはへんって、いわれたの……。……そ、それで……いし、なげられて、いたくて……。ひとつめだから、みんなにき、きらわれてるの……」
 ぐす、ぐすっと嗚咽を漏らしながら少女は言った。その言葉に青年は少女の目線に合わせるように屈むと、少女の頭を優しく撫で始めた。
「あら、そんな奴いたの!? そんな奴怒っては良いわ。ガツンと言ってやりなさいよ! それにアタシはあんたのその眼、綺麗で素敵だと思うわ。……アタシはあんたのこと、好きよ?」
 その言葉に少女はぽかんとしてしまった。あら、間抜けな顔。なんて言われてしまったが仕方ない。何しろそんな言葉をかけられるのは、初めてだったのだから。
 ん? と微笑みながら首を傾げる青年の顔がまた歪んでいく。
 堰を切ったようにわあわあと泣き出した少女を抱きしめると、「気が済むまで泣いちゃいなさいな」と言って青年は少女を抱きしめた。
 時折とんとんと優しく叩かれる背中と、柔らかく包み込む腕の暖かさに、少女はさらにんみだがこぼれるのを感じた。そして目の前の優しい人にぎゅっとしがみつくのだった。

 ――小さな少女を泣かせたと、青年が職務質問を受けることとなるのは、また別の話。

< prev top next >
top